ライチの思い出

まだ私が可愛い純粋な子供だった頃。

私は日本にいました。

何故だか忘れましたが、その日、私は父と中華レストランにいました。
父と私の前に、今までに見た事がない物体がありました。

それは、丸くて、赤黒く、表面がザラザラ、ゴツゴツの得体の知れない物体でした。

ライチです。

当時の日本では、ライチはまだ珍しい物でした。

「お父さん、これ何?」
私は父に聞きました。

偶然、私達のテーブルのそばを通りかかった
ウェイターさんが、
「それは、ライチという果物なんですよ。」
と、答えてくれました。

お父さん、セーフ!

「知らない」と言わなくて、すみました。
「お父さん、ライチって、どうやって食べるの?」

幼い私は、またお父さんに聞きました。

先ほどのウェイターさんが、また通りかかったようで、

「皮を剥いて、食べるんですよ。」
と、答えてくれました。

お父さん、再度セーフ!

「知らない」と言わなくて、すみました。


お父さん、ライチの皮を剥いて、自分の口に入れました。

「お!これは美味しいライチだ!」

でも、お父さんの顔、何故か苦しそうです。


またまた、先ほどのウェイターさんが通りかかりました。
「ライチ、いかがでしたか?」

お父さん「美味しいライチですな。」


お皿をさげようとしたウェイターさん、
にこやかな表情が、一瞬ギョッとなりました。
「あ、あの…種…?」

父「た、種? 種って…何でしょう?

       気がつきませんでした。

      …すみませんが、

      お水ください。

大きくなった私、香港でライチを食べています。

ライチを食べる度にいつも思います。

お父さん、あなたは偉大でした。

ライチのこのデカい種、

私にはとても飲み込めません。




香港 ゆるゆる〜 太極拳日記

香港人に太極拳を教わり、教えている日本人です。香港人との太極拳的生活をゆるゆる〜と綴ってまいります。

0コメント

  • 1000 / 1000