ある日、電車の中で
ある日、電車に乗っていました。
車内は混んではいないけど、座席は全て埋まっている状態でした。
私は座っていました。
途中で、おじいちゃん、お母さん、孫と思われる3人組が乗ってきました。
お母さんと孫はドアの近くの手すりに掴まりました。
おじいちゃんは、二人から少し離れて、私の前に立ちました。
おじいちゃん、吊革に掴まりながら、私を見下ろす格好になっています。
おじいちゃん、ボソッと言いました。
「満席か…。」
これでも気を遣う日本人の私、おじいちゃんの言葉は誰に向けて言ったものなのか、ちょっと気になりました。
おじいちゃん、またもやボソッと、
「座れないか…。」
…もしかして、私に言ってる?
私が顔を上げると、おじいちゃんと目が合いました。
おじいちゃん、今度は
「はぁ〜〜〜〜。」
大きなため息をつきました。
今度は聞き逃さなかった私!
おじいちゃん、座りたいのか?
実は、こう見えて私、お年寄りに席を譲るのはやぶさかではありません。
が、なんでしょう、今回は
「譲りたくない!」
と、思ってしまいました。
私、おじいちゃんのため息が聞こえないふり。
目をそらします。
おじいちゃんの眼力の圧を感じます。
おじいちゃん & 私
「・・・・・・。」
なんか根比べみたいになっています。
と。
私の隣に座っていたお姉さんが突然立ち上がり、
「どうぞ。」
と、おじいちゃんに席を譲りました。
いい人だ!
おじいちゃん、嬉しそうに お姉さんにお礼を言いました。
そして、おじいちゃん、自分が座るのかと思いきや、孫を呼びました。
孫の男の子、すーーーっと来て、空いた席にチョコンと座りました。
おじいちゃん、孫を座らせたかったのか。
ところで、孫、なんとなく元気がありません。
座りながら、うつむいています。
すると、おじいちゃん、孫に呼びかけました。
孫がお顔を上げると、おじいちゃん、両手で吊革にぶら下がって、
懸垂を始めました。
意外な展開に、思わず私、おじいちゃんを凝視。
孫もおじいちゃんを見つめています。
懸垂2~3回したおじいちゃん、ドヤ顔で着地。
お顔が真っ赤です。
おじいちゃん、一息つきました。
そして、また両手で吊革に掴まると、
今度は膝を胸まで引き上げ、
足上げ懸垂!!
お、おじい、やるな!!!
そうこうしている内に電車が駅に着きました。
お母さん
「降りるわよっ!」
おじいちゃんと孫、
「はいっ!!」
仲良く手をつないで電車を降りて行きました。
一人、取り残されたような気分になった、ある日の私でした。
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