サエコの力
太極拳のパーティーでは、武術家たちは表演 (演武) をします。
普通、表演の順番は、大御所になるほど後になります。
そして、表演が一通り終わってから食事です。
(パーティーでの前菜・仔豚の丸焼き)
先月、あるパーティーに参加しました。
主催者が趣向をこらしました。
食事と表演を
「同時進行」で、
表演の順番を
「くじ引きで決める」、
との事です。
くじ引きには、ここ数年の私、いい思い出がありません。
(「くじ運」2016年10月20日)
(「サエコ・パワー」2017年2月27月)
(カニフライ)
当日、パーティー会場に到着。
いつ名前が呼ばれても表演できるように、
すぐカンフー服に着替えました。
着替えたら、これまた、いつ名前が呼ばれてもいいように、ウォーミングアップしました。
そんな事をしている間に、周りの人達の名前が呼ばれ、表演が始まりました。
テーブルにも食事が運ばれてきました。
私はかっ喰らいたいのをグッと我慢し、少しずつ食べていました。
表演の舞台上で胃がアップダウンするわけにはいきませんから。
時々、席を離れてウォーミングアップをしなくてはいけません。
また、緊張しやすい私はトイレにちょこちょこ行くのも欠かせません。
全ては「いつ名前が呼ばれてもいいように」
しかし、そんな私の心意気とは裏腹に、私の名前はいつまで経っても呼ばれず…。
周りの人たちが次々と呼ばれていきます。
(フカヒレスープ)
パーティーの中盤。
2度も名前を呼ばれ、2回表演した人も出てきました。
私は少食に徹し、ウォーミングアップ、合わせて寸暇を惜しんでのトイレ。
同じテーブルの先輩方々が
「いいから食べなさい。」
「落ち着いて座りなさい。」
と口々に言います。
言われて仕方なく席に着くも、3分もすると立ち上がり、なんか体操している私。
(同じテーブルの先輩談)
(パーティーでよく出るお料理)
司会者が唐突に、
「皆さん、表演の途中ですが、ここでちょっと休憩！」
「抽選会をしたいと思います！」
「お手持ちのチケットの番号をご覧ください！」
と、言いました。
そして、番号を読み上げました。
ウォーミングアップしながら、チケットの番号が読み上げられるたびに、いちいちチケットを確認する私。
あぁ、仕事が1つ増えてしまったわ！
が、結局、番号は、かすりもしない内に抽選会終了。
やっぱりな。
私にはくじ引きの貧乏神が付いているんだわ。
…。
……。
…ひょっとして…？
…サエコ先輩のお顔が頭をよぎりました。
(お料理を取り分けるウェイターさん)
表演が再開しました。
相変わらず、私の名前は呼ばれません。
やっぱり！
サエコ先輩！
恐ろしいコ！！
居なくても、とりついてる！
(パーティーでよく出るお料理)
パーティーも終盤。
時間的に表演できるのも、あと数人となりました。
今日はウォーミングアップだけで終わりそうです。
なんだか急にお腹空いてきました。
放心したように席に着いて、急にかっ喰らい始める私。
(同じテーブルの先輩談)
と、突然、強く肩を叩かれました。
「表演だよ！」
「名前呼ばれたよ！」
同じテーブルの先輩方々が私を見て言っています。
一心不乱にかっ喰らっていて、名前を呼ばれた事に気がつきませんでした。
「良かったねぇ！3時間、落ち着かなかったもんねぇ！！」
私がですか？
それとも先輩方々が、でしょうか？
「さささ、早く正面の舞台に行きなさい。」
追い出されるように、舞台に向かわされる私。
でも、もうお腹いっぱいだし。
ウォーミングアップした身体は完全にクールダウンしちゃってるし。
サエコ先輩の力は中途半端です。
その日、重いお腹を揺らしながら、苦しい表演をした私でした。
(壽包というおめでたい餡饅)
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